研究にせよ教育にせよ、いまやPCなしでは仕事にならない。ところが、自分の専門から外れた「PCそのもののハードウェア的なトラブル」に直面すると、私を含め、途端に腰が引けてしまう人は多いのではないだろうか。
数ヶ月前、研究室で使っていたHPのデスクトップPCが、起動して数分するとブルースクリーンになり、勝手に再起動を繰り返すようになった。幸い、大事な研究データや授業資料はOneDriveやDropboxに同期してあったので、実害はない。とりあえず隣にあった少し遅いサブ機に作業を移し、問題のPCはそのまま部屋の隅に置きっぱなしになっていた。
メーカーの修理窓口に連絡して発送する手間を思うと気が重いし、かといって同等のPCを買い直せば、いまの時代10万〜20万円は覚悟しなければならない。もう年数も経っているし、これはもう諦めるしかないか……。そう思いかけていたとき、ふと「面倒なことは、とりあえずAIに聞いてみるか」と思い立った。これが、今回の一件の始まりだった。
AIの「目」が本当の原因を見抜いた
エラーメッセージは一瞬で消えてしまうので、スマホで動画を長回しして、ブルースクリーンの瞬間を撮っておいた。その画像を生成AIに投げて、「原因は何が考えられる?」と聞いてみる。
AIは画像の中の「Stop code: 0xc0000218」という文字列をすぐに読み取り、これはレジストリファイルの破損、つまりストレージ(保存場所)が物理的に寿命を迎えたか故障している可能性が高い、と筋道立てて指摘してきた。
そこで私はPCのサイドパネルを開け、中にあった1TBのハードディスク(HDD)を取り外して、その型番を意気揚々とAIに伝えた。これで原因を取り除けたはずだ、と思っていた。
ところが、返ってきた答えは予想外だった。
「それはデータ用のHDDです。起動用のOSが入っている『M.2 SSD』が、PC内部の別の場所にあるはずです」
言われるままにもう一度中を覗き込んでも、ケーブルでつながった分かりやすい箱型の部品は他に見当たらない。半信半疑のまま、マザーボード周りの写真を撮って、もう一度AIにアップロードした。するとAIは、CPUファンのすぐ脇に張り付いた、ガムほどの大きさの薄い基板を指して「これです」と答えた。しかも、けっして鮮明とは言えない写真から、「SK hynix製の256GB NVMe SSD」という型番まで正確に言い当ててきたのだ。
専門外の人間なら見落としてしまう小さな部品を、画像認識AIがあっさり見つけ出す。これには素直に驚かされた。
パーツ選びと、思わぬアナログな落とし穴
原因の部品さえ分かれば、あとは交換するだけだ。AIの助言に従って、交換用のM.2 SSDを探し始めた。
ここで思い知らされたのが、いま(2026年初頭)は世界的な半導体需要のあおりでSSDの値段がひどく高騰している、という市場の現実だった。名前も聞いたことのない新興メーカーの512GBモデルですら12,000円を超えるという有様の中、AIは相場と製品の耐久性(TLCとQLCの違いなど)を並べて比較してくれた。おかげで、信頼できるハイエンドモデル「WD_BLACK SN7100 1TB」の在庫を、約1.3万円という妙に条件のいい価格で発注できた。
数日後にパーツが届き、いよいよ交換作業に入る。古いSSDを外し、新しいSSDを差し込む。ここまでは順調だった。
ところが、ここで最大の山場が来る。SSDを固定するための極小のネジが指先から滑り落ち、PC筐体の奥、入り組んだ配線の隙間へと消えてしまったのだ。
どんなに優秀なAIでも、現実の空間に落ちたネジまでは探してくれない。結局、懐中電灯を口にくわえ、床に這いつくばってPCを傾けながら、自力でネジを捜索するはめになった。最先端のAIに頼り切っていた直後だけに、この泥臭さがなんともおかしかった。
クリーンインストールと、最後のもうひと山
ネジを無事に救出し、物理的な交換を終えたら、次はWindows 11のクリーンインストールだ。
ここでもいくつか引っかかった。私はMicrosoftアカウントと紐づけないローカルアカウントで使いたかったのだが、最近のWindowsは、インターネットにつながっているとローカルアカウントの作成画面を出さない仕様になっている。これもAIに聞くと、コマンドプロンプトで oobe\bypassnro と打ち込んでネットワーク接続をスキップする方法を、すぐに教えてくれた。
設定を終えてデスクトップは無事に表示されたものの、今度は画面の下のほうが黒い帯になって、一部が映らない。「せっかく直したのに、グラフィックボードまで壊れていたのか」と一瞬ひやりとしたが、AIは「オフラインでインストールしたので、いまは画面表示用の仮ドライバーで動いているだけです。ネットにつなげば直ります」と落ち着いたもの。LANケーブルを挿してWindows Updateをかけると、数分で見慣れた正しい解像度の画面に切り替わった。
まとめ:専門外のトラブルこそ、AIに聞くといい
結局、約1.3万円の出費と数時間のアナログな格闘を経て、放置していたPCは、以前より大容量で高速なSSDを積んだ現役マシンとして復活した。買い替えの費用を思えば、かけた金額に対する見返りは十分すぎるほどだった。
今回いちばん実感したのは、自分で調べるのが億劫な専門外のトラブルでも、とりあえずAIに投げてみれば、解決への道筋が案外あっさり見えてくる、ということだ。
PCトラブルに限った話ではない。「専門知識は要るけれど、一から勉強している時間はもったいない」。そういう場面で、生成AIはかなり優秀な壁打ち相手になり、パーソナルアシスタントにもなってくれる。
毎月払っているAIのサブスク料金も、今回の一件だけで、この先数年ぶんの元は取れた気がしている。もしあなたの部屋にも、原因が分からないまま放置している機材があるなら、一度その写真をAIに見せてみてはどうだろうか。
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